知らなくてもよいことはあるものです

先日ユニークで面白い短編小説を読みました。この短編集には世間的にみて「ちょいとずれている人達」の滑稽で斬新な生活や事件が収められています。その中で私が最も斬新だと感じたのは、犬と猫の鳴き声を翻訳する装置を作ったおもちゃメーカーの話です。ここ最近のペットブームにあやかろうと研究とリサーチを重ねて作ったこの装置をモニターの人達に試してもらうことになります。モニターとなった人々の愛するペット達の発言の面白さがかなり心を打ちました。当初は電車の中で読んでいたのですが、2回ほど吹き出してしまい周りにいる人達から少々滑稽な目で見られてしまったことから部屋で一人の時に読む事にした程です。
この作品を完読してから思ったことは、知らなくてもよいことはあるのだということした。犬も猫もどんなことを考えているか分からないからこそ人との生活に上手く調和することができるのだと思います。そしてこれは人間関係にも通じるところがあるのではないでしょうか。例えばパートナーの心の内を全て知りたい、好きな人の過去を探りたいと思ったことも少なからず誰しもあると思います。でも実際知ってしまったことで、やっぱりあやふやにしておいたほうがよかったと後悔することも少なくないはずです。とはいえ知りたいという欲求に駆られることは人間の欲求の一つなのだと思います。その対象を好きであればこそ願望は強くなるものです。この短編小説はそんな人間の欲望をコミカルな視点で描いた最高にクールな作品だと感じました。

自然と作物への感謝を忘れない

この1ヶ月間で2巻に渡って収められた映画を観ました。この作品の原作は本が元となっており、自然の中に身を置き自給自足で暮らす女性が主人公のゆったりとしたも物語です。春夏秋冬の移り行く環境中で野菜やコメ、穀物などを栽培しながら生きる主人公の姿勢からは自然と向き合うことの大切さをヒシヒシと感じます。
日常生活で利用するスーパーに並ぶ野菜や果物などの商品を購入していると、そこにあることが当たり前のように感じてしまいます。それは決して当たり前のことではなく、農家の人達が丹精を込めて愛情を掛けて育てているからこそ、私達が美味しく食べることが出来るのだということに気付かせてくれました。また農作物だけではなく肉や魚も同じことです。命宿るものを食していることを自覚すること、その命を胃袋に収めることに感謝しなければならないからです。飽食の時代となり、流通網も発達した日本で暮らしているとそんな感謝の気持ちを忘れがちです。そのため食と向き合った小説や映画を観る事は生きる原点に返らせてくれるきっかけとなるものです。こうした作品に出会うことは、当たり前の習慣がどれだけ貴重なことなのかを分からせてくれると同時に、美味しくじっくりと素材の味を噛みしめる食の楽しみ方を改めて見つめ直すことを与えてくれるのです。

This entry was posted on 2016年1月17日, in 過ごし方.

心に残る映画作品

夜の道を目的地に向かって歩くロードムービー仕立ての映画を観ました。ある出来事により住んでいた街を十年以上前に去った男女が夜更けにおこなわれる追悼式に参列するためにその公園に向かって歩き続けます。この2人に接点はなく降り立った駅でたまたま出会い時間を供にすることになります。ふるさとを去った理由は異なりますが、新しい街で過ごしてきた時間の中で生まれ育った街への思いは複雑に募っていたようです。この映画は2人の会話が主体で描かれています。見ず知らずの他人同士だからこそ話せる今まで整理することが出来なかった感情が少しずつ前向きな方向へと変わってゆきます。この作品を最初に見たのは今から5年前でした。私も年を重ねたせいか台詞の一つ一つの重みを以前観た時よりも強く感じました。
ラストの場面では追悼式の会場を前に「また来年」といって2人は別れます。連絡先も交換せずに来年を約束した男女は翌年もきっとこの地を訪れるのだろうと思いました。人には多かれ少なかれ複雑に絡み合い整理できない過去や忘れたい思い出があると思います。しかし何かの出来事で向き合うきっかけが訪れる時があります。忘れたい過去と向き合うことは辛いことですが、その果てには今までとは違うものが見えるのかもしれません。この映画を通して生きていくことの重さと希望を強く感じました。

This entry was posted on 2016年1月3日, in 過ごし方.

駅の構内にある情報発信基地

先日久々に以前よく通っていた立ち飲み屋に行きました。このお店は大型ターミナル駅の構内にあり、朝から夜まで人でが絶えることはありません。朝はモーニング、昼から夕方にかけてはランチ、夜は立ち飲み屋として繁盛しています。とても小さな空間のため座席数は少なく、壁に向かって立ち飲みをするカウンターがかなりの場所を占めています。私はこの店に通い始めてから壁に向かって一人静かにお酒を飲む楽しみを知りました。そして何と言っても壁には提供するメニューや店から定期的に発行される新聞などのたくさんの壁紙が貼られているのも嬉しい限りです。先日はミュージシャンとしても活躍しながらイラストレーターでもある男性アーティストの絵が飾られていました。お酒を飲みながらこのアーティストの作品を観ているだけでもとても素敵な時間を過ごすことができたことを嬉しく思います。大型ターミナル駅の片隅にあるいつも賑わいを見せるこの空間は時としてミュージアムにも変身する不思議な場でもあるのです。また壁に貼られている新聞や、随所に置かれたフリーペーパーもかなりの楽しみを提供してくれます。今まで知ることのなかった新しい発見をすることもあり、生活によい刺激を与えてくれるものです。ここから発信される情報源を元に購入した書籍や訪れた写真展なども数多くあります。どうかこれからも、知る人ぞ知る憩いの場として末永く人々にやすらぎを与えてくれますようにとビールを片手に心から感謝した時間でした。

This entry was posted on 2015年12月21日, in 過ごし方.

すいかから思うこと

レトロな昭和物件に憧れていた時期があります。畳とダイニングがあって、お風呂とトイレは別。収納は押入れを利用して部屋の中にはちゃぶ台を置き、寝る時は布団を敷く生活も風情があっていいなと感じることも少なくありません。そんなちょっとした憧れからか、以前立て続けにレトロなアパートや家に住む人達が登場する小説やマンガを読んでいたことがあります。こうした家に住む人々はどこかマイペースで、それでいて何でも寛容に受け入れる心意気と自分らしさを持ち合わせているものです。
中でも私の心に深く刻まれているものは、女性5人が共同生活をする小説です。連続ドラマとして映像化されたこともあり、私は原作とドラマのどちらも拝見しました。特にテレビドラマは個性的な女優さん達の演技が魅力で、放映が終わった後にはDVDをレンタルして観たほどのお気に入りです。それぞれ仕事も生きている環境も違う5人が供に生活し、語らう姿は心が暖まりよい気分にさせてくれます。この作品で最も心に残っているシーンはみんなで西瓜を食べる場面でした。丸くて大きな西瓜は一人では食べきれないものです。だからといって2人で完食するにもかなりの時間を要します。そのため3人以上で食べることで美味しく程よい加減の量を食すことが出来るのだと思います。この作品でもすいかは人との関係を表現するエピソードとして用いられていました。私も機会があったら大切な人達と大きな西瓜を食べたいと思いました。

小説と映画から楽しむ日本文学

ここ最近、小説を元にした日本映画を幾つか観ています。たまたま頂いたDVDレンタルのクーポン券を利用して、今まで読んできたお気に入りの日本文学を映像化したものを鑑賞してみようと思ったからです。DVDレンタルショップの棚から珠玉の一品を探すことも楽しくて、時間がある時にはお店に足を運ぶようになりました。数十年前に制作されたものからここ最近話題になったものまでたくさんの映画に出会うことができます。特にミステリー小説を映画化したものは濃厚で面白いものが多いと感じています。小説を読んでから映像作品を観ることが多いのですが、映画は監督をはじめ作る人がその小説を受けてあらたに息を吹き込んでいると思います。そのため原作とは違う視点から作品を噛み砕くことができることや、小説とは異なる捉え方を発見できることがたまらなく面白いものです。そして何よりも女優や俳優の演技が映画の魅力を最大限に引き出しているところは映画ならではだと思います。最近観た作品では出演した女優さんが賞を総なめしたものがありました。若い頃からその方が出演したドラマなども観てきましたが、年を重ねたキャリアと凄みは観ている者を圧倒させてくれるものでした。一つの小説から2つのフレーバーを味わうことに面白味を感じる今日この頃です。

本を楽しむ

帰宅途中に立ち寄った駅で古本屋に寄ってみました。駅の目の前にあるお店で品揃えも充実しています。帰宅途中の時間帯でしたが人もまばらでのんびり、そしてゆっくりと買い物を楽しむことが出来ました。このお店に寄ったきっかけは駅前で貰ったクーポン券がきっかけでした。日々読書を楽しむ私にとって安く手軽に本を購入できることはとても嬉しいことです。そのためクーポン券を貰ってから数日と経たないうちに、お店にむかい3冊購入しました。
この日セレクトしたのは、お酒についてのエッセイ、フランスの恋愛事情、短編小説が集められた作品です。短い時間の中で数冊の本をセレクトすることは少々大変でしたが、読書の楽しみを考えると苦になりません。それどころかどんな素敵な作品に出会うことが出来るかと楽しみになります。本を購入する楽しみは一期一会の貴重な出会いもその一つだと思います。
今日からまた楽しい読書ライフが始まります。購入した書籍の中から何をどんな順番で読むかを想像するだけで楽しみです。本を読む楽しみの中には、書店で購入することや図書館で借りることがあると思います。作品の魅力を存分に噛みしめながら、時間を掛けてこの3冊の本を完読したいと思います。

普通の日常生活は代えがたいものなのです

仕事や家事をして平凡に過ぎていく生活を送っていると生活に変化が欲しいと感じることも多いものです。何か特別なことをしたい欲望に駆られることや、非日常的な変化を取り入れることを試みることも少なくありません。また「何かよいことないかな」と思いを巡らせることもあるかもしれません。そんな時には、思考を変えるために読書をすることもあります。刺激的なストーリーの小説を読むことで、登場人物と一緒に非現実的なストーリーの世界を味わうこともよいことです。しかしながら私は最近思うことがあります。それは何気ない穏やかな日常を送ることは、とても貴重なことなのではないかということです。変化がないようにみえても心は刻々と変化してゆくものです。同じ仲間と過ごしていても考え方や感情は日々変わってゆくものなのだと感じます。日常の大切さを知ってからというもの、日常の中の機敏を描いた作品を読む機会が増えました。こうした作品は普遍的な中にある変化を敏感に捉える感受性を養うためにも効果があると感じています。文学作品から恋愛や友情関係は日常の延長線上にあることを学び、心の片隅に置いておくことで人とのよい関係が育まれるのではないかと感じています。

四季を感じる幸せ

春夏秋冬を楽しむことが出来る日本に住んでいると四季折々の光景を楽しむことができます。季節の変化を楽しむことは気持ちをリフレッシュすることにも役立つものです。
今から数年前のよく晴れた初夏の日に古都と呼ばれる町を散歩した時のことです。路地を入ってみると神社へと続く道に季節の花々が咲いていました。またふと顔を上げると山々の新緑が美しかったことが心に焼き付いています。美しい自然に囲まれながらこの季節がずっと続けばいいのにと心から思ったことが昨日のように感じられます。こうした季節の移り変りを肌で感じてからというもの、植物や昆虫について書かれた本も積極的に読むようになりました。大学教授の作品や植物を育てることを趣味として楽しんでいるミュージシャンが書く書籍まで、様々な本が売られています。著者によって感じ方も異なるためどの本も個性豊かなところが面白いです。こうした書籍を読んでいるとどんな時でも自然を楽しむゆとりを持つ生活をしていれば前向きな思考を育むことができるのではないかと思うようになりました。目と肌で感じ、そして書籍からもたくさんのことを学ぶことは日常を豊かにすることでしょう。
数年前の散策で味わった気持ちは思い出すだけでも幸せな気分になります。季節が織りなす自然を肌と書籍から感じながら毎日生きてゆきたいものです。

This entry was posted on 2015年10月9日, in 過ごし方.

いつの時代にもある師弟関係を考える

最近師弟関係について考えることがあります。きっかけは女性随筆家の「師」について書かれた本を読んだことからでした。この随筆家は今からおおよそ50年位前に銀座で骨董のお店を出していました。女性実業家であり、骨董のコレクターでもありそして幾つもの書籍もこの世に残した人です。多彩な才能と持前の行動力で、今よりもはるかに男性優位な社会であった時代を歩んだ女性です。この書籍には美術コレクターでもあった男性の才能と破天荒な生き方が事細かに描かれていました。弟子になったことでたくさんの苦労をしたことを感じます。そのためか編集者からこの本を書いてほしいと頼まれてから長い年月を経てペンととったと書かれていました。それだけ当時の思い出や出来事は著者の中では重く大きな経験だったのだと感じます。
師弟という大それた言い方をしなくても、世の中には先輩後輩の関係が身近にあります。学校や職場、習い事など様々な環境でこの関係は切っては切り離せない関係でもあるのです。そして今までの経験からすると、よき先輩に出会うことは人生の大きな財産となります。相手が男女関係なく、「こんな年の取り方をしたい」と感じる人に出会えることほど貴重な経験はありません。またその一方「こんな年の取り方は絶対にしたくない」と思わしてくれる人に出会うことも貴重な経験です。それは反面教師として心に残るためよい意味での人生になるからです。女性随筆家が供にした師との貴重な時間を書いたこの本は今を生きる私達にもよきアドバイスを与えてくれます。